第2章

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「……あの。俺に彼女がいない事が、悠木さんにそんな苦虫を噛み潰したような顔をさせる事に繋がるとは思えないんですが……」 「はあ? 大いに関係あんだよ! お前がフリーだと女子連中が躍起になってお前にモーション掛けようとすんだよ!」  瀬名はまだ状況が飲み込めていないといった様子で、捲くし立てる俺を見ている。 「でも直接お前に行く勇気がない。そしたらどうなるかわかるか? お前の近くにいる人間使って近付こうとすんだよ! 女子ってのは!」 「……はあ」  俺の勢いに圧倒されたように瀬名は相槌を打つ。 「で、お前と一番仲いい人間って誰だよ? 俺だよ、俺!」  言った途端、なぜか瀬名は面食らったような顔をして、やがてふわりと表情を和らげた。 「なに笑ってんだよ! こっちは笑い事じゃねえんだよ!」 「すみません。つまりは俺の知らないところで悠木さんにご迷惑をお掛けしていたって事ですよね?」 「そうだよ! いい加減にしろよお前」  完全な八つ当たりにもかかわらず、瀬名はにこにこしながら「すみません」と謝罪した。 「野郎だったら遠慮なく怒鳴り散らせんのに、相手が女子だから無下にもできねえし、こっちはストレス溜まんだよっ」  叫んだお陰かちょっとスッキリして、再びサンドウィッチにかじり付いた。 「悠木さんって本当に女性には気を遣いますよね。それはもう女尊男卑ってなくらいに」  瀬名は『には』の部分を強調した。俺は元来言いたい事ははっきり言うタイプだけど、昔から女性に対してだけは強く出られない。 「あー……、うち、親父いなくて母親と妹と三人でさ。ガキん頃からそんなだから、女子は守ってやらねえとってのが刷り込まれてるっつーか」 「ああ、……なるほど」  瀬名は合点がいったように頷く。先程とは違う気まずさが込み上げる。
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