第2章

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「……羨ましいです」 「お前も作りゃあいいじゃねえか。選びたい放題だろ」  瀬名は複雑な表情を浮かべて、しばらくの間黙り込んだ。ビールを二、三口飲んだあとようやく切り出す。 「最近ね、わからないんです。恋愛ってどんなだったかなって」  瀬名は珍しく大きな溜息を吐いた。 「今までの自分の恋愛観が根底から覆されそうな出来事に直面しているというか……」  瀬名が一体何を言いたいのか、よくわからなかった。それが顔に出ていたのか、瀬名は俺を見てふっと笑った。 「いいんです。自覚したところでどうせどうにもならないんで、今は仕事に専念します」  やはりどういう意味なのかわからなくて頭を捻るが答えは見えてこない。大量のアルコールを摂取した状態では余計に頭が回らなかった。 「でも、本当に楽しみです。悠木さんと仕事するの」 「ンな事言って俺指名したのって、どうせ年近くて物が言いやすいからだろ」  照れ臭くて皮肉を返すと、瀬名は相好を崩した。 「俺は悠木さんの事尊敬してますから。妥協を知らなくて、仕事に対して真摯で。……かっこいいですよ」  真っ向からの言葉も、嬉しそうな顔も見ているのが恥ずかしい。瀬名といるのは心地いい。俺は瀬名のように思っている事をそのまま口にはできないけれど、瀬名の事は気に入っている。信頼しているし、俺の事をちゃんと理解してくれていると思える。気が合う、と言えばいいのか。最近では会社の同期や学生時代の友人達よりも、気の置けない存在だとすら感じた。 「ばーか。惚れんなよ」  冗談めかすと瀬名は何も答えず曖昧な顔で笑った。
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