第2章

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 普段は口数の少ない自分が饒舌になってしまうくらい、この空間が気持ちよかった。だらだらと話しながら、テーブルに積まれたアルコールの殆どを消化した頃には、俺は半分机の上に崩れ掛けていた。 「悠木さん、もう今日はここまでにしておきましょうか?」  瀬名の柔らかい声がすぐ側で聞こえる。 「……まだ、飲む」  このまま眠りに落ちたらさぞ気持ちいいと思う。だけど瀬名との時間が楽しくて、終わらせてしまうのが勿体なかった。 「ここで寝ちゃ駄目ですよ」  そっと肩を起こされると、少し困った顔をした瀬名と目が合う。 (やっぱ男前だなあ……こいつ)  至近距離にある端正な顔立ちをまじまじと見つめて感心していると、瀬名が不自然に目を逸らした。 (……なんだ?)  どうかしたかと訊ねる前に、強引に体を起こされる。 「寝るならベッドに行きましょうね」  強引に抱き起こされて、引きずるようにベッドの上に載せられた。 「……嫌だ、寝ない」 「子供みたいですよ」  駄々っ子のような俺の抵抗を難なくかわして、瀬名は俺の上にブランケットを掛けた。 「俺は……寝ない。まだ話す」 「はいはい、わかりました。それじゃあこのまま話しましょう」  瀬名はベッドの淵に腰掛けて、俺の顔を上から覗いた。完全に子供を寝かし付ける親の体勢だ。 「……なあ、瀬名」 「はい、なんですか?」 「俺な……お前が俺と仕事したいって言ってくれて、めちゃくちゃ嬉しかった」  酔いの所為か、表情筋が勝手に緩んだ。 「……悠木さん」  虚をつかれたような表情で、瀬名は呆然としていた。 「仕事、すげえ楽しみ。……頑張ろうな」  段々と視界が狭まってくる。眠い。眠くて仕方ない。意識が遠のいていく。完全に瞼を閉じたあと、瀬名の声がした。 「……もう、どうしてくれるんですか。どうにかしたくなっちゃったじゃないですか」  夢と現実の境界が曖昧な意識の中で、瀬名が何かを言っている気がした。 「略奪愛は趣味じゃないんですよ」  意識が完全に途切れる間際、頬に何かが触れる感触がした。
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