第6章

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「……っ」  足首を掴んで引っ張られ、体がずるりと沈む。岩肌に背を寄せて、それ以上沈まないようにしがみついた。浮いた腰を瀬名の腕が捕らえる。 「っ、ん!」  触れられると、そこがひくつくのが自分でもわかった。恥ずかしくて身を捩って逃げを打つより先に、瀬名の指が突き立てられる。 「……っく、ダメだ。……お湯が汚れる」 「掛け流しだから大丈夫じゃないですか?」  先程の殊勝な態度が嘘のように、瀬名が意地悪な笑顔を浮かべる。散々弄られた最奥はまだほぐれたままで、簡単に瀬名の指を飲み込む。間を置かず指は二本に増えて、内部を拡げるように動いた。 「…ひっ! や……お湯、入る」 「悠木さん、あんまり大きな声出すと誰かに聞こえちゃうかもしれないですよ?」  どこか楽しそうにそう言われて、ここが外だという事を思い出す。慌てて片方の手で口を塞いで、瀬名を睨み付けた。 「それとも、旅の恥は掻き捨てって事で、開き直っちゃいます?」 「……んっ、ぅ」 「とは言っても、ここの女将さんにはもう開き直らざるを得ない状況ですけど……」  昨夜の行為で、ぐちゃぐちゃに汚れた布団や浴衣。あんな物を見られたら一目瞭然だった。ただでさえ水浸しのスーツで現れた怪しい二人組みなのに……。あと数時間後には女将と顔を合わせなくてはならないと思うと、逃げ出したくなる。 「……ぅ、ぁっ」  弱い部分を撫でられて、堪らず声を上げる。手の甲に歯を立てて必死に声を抑えようとした。一晩で自分の知らないような事まで探り当てた指に、幾らも持たずに陥落するのは目に見えていた。 「……ば…か、もう……本当に無理」  本気で勘弁してくれと首を横に振ると、瀬名は自虐的な笑みを浮かべた。 「メッキ剥がれちゃうんですよ、あなたといると。それどころか自分でも知らないような自分が次々出てくる……」  指がずるりと抜かれて、ぎゅっと裸の胸に押し付けられる。 「俺は、まだまだ全然あなたが足りないですよ……」  あやすように背や髪をゆるゆると撫でられた。甘い声で呟かれたその言葉が、怖いと思うのに、結局自分は拒む事ができないのだろうという、限りなく確信に近い予感がした。  完全に夜が開け切るまで、瀬名の宣言通り……体の隅々まで洗われた。
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