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共に暮らし、共に生きる
そして好奇心旺盛なアマンダは、こんな事も言い出した。
「私、馬車だけじゃなくて馬にも乗ってみたいの」
「だったらまず、馬にまたがった僕の前に君を横向きに座らせて、プライベートビーチをゆっくりと歩いてみよう」
「楽しみだわ! いつか私も馬にまたがって走れるようになるかしら?」
「馬にまたがって走るレディにはまだお目にかかった事はないけれど、君ならその第一号になれるかもしれないね」
「私が第一号になったら、ルーカスは誇らしく思う?」
「うん、君を誇りに思うよ」
「だったら私、馬に乗る。馬を乗りこなせるように練習するわ」
「うん。君が馬を上手に乗りこなせるようになったら、一緒に山の麓にある離宮まで遠乗りしよう。ジビエ料理が楽しめるよ。それにその山では、とっても美味しいキノコが採れるんだ」
「今日は森でピクニック、明日はビーチで馬に乗せてもらって、いつかは遠乗り。そしてジビエ料理に美味しいキノコ……。ああ、陸にはいろんな喜びが溢れているのね!」
「そうだよ。陸へようこそ、元人魚姫。幾久しく、私と共に陸で暮らしてください」
ルーカスはアマンダの足元にひざまずき、改めてプロポーズした。二人が恋心を失ってから初めてのプロポーズだ。
「もちろん喜んで! 私はあなたと共に生きるために陸にやってきたんですもの」
「じゃ、予定通り結婚しよう! 婚約指輪はどんな宝石が良い?」
「海の色の石ってあるかしら?」
「青い石ならサファイア、ターコイズ、ウルトラマリン、アクアマリンあたりだね」
「この馬車のような可愛い色は?」
「だったらターコイズだね」
「水のように透き通った石なんてあるかしら?」
「それならサファイアかアクアマリンだね……」
あの日以来、ルーカスはもはやアマンダを見てもときめかなかったが、彼女が歌えば陶酔できた。そしてルーカスに陶酔を与えることは、彼女の喜びだった。そしてアマンダももはやルーカスを見てもときめかなかったが、二人の間にはたしかな愛があるのだ。
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