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本当は、週刊漫画雑誌の最新号が読みたいだけで戻ってきたのだが、確かに仕切り直した方がいいのかもしれない。少し店にいて客を待ってみようか。
フロアでぼんやり漫画を読んでいるとドアが開いた。慌ててカウンター内に戻ろうとしたとき、その客の様子が少しおかしいことに気付いた。
「……うわ」
「へへっ……」
ゆらり、と近づいてきた男は、柊の肩をぐっと掴んであっという間に馬乗りになってきた。喉元をすごい力で抑え込まれ、呼吸ができなくなる」
「おまえ!」
店長がカウンターの向こうから、こちらにこようとするより早く、入り口から誰かが近づいてきた。
「たすけ……て」
苦しい喉から搾り出すように夢中で助けを請うと、その人は男を押さえつけると後ろ手に回しうつぶせに組み敷いた。
「うっ……かはっ……ごほっ」
せき込む柊の横で、取り押さえられた男はわけのわからないことを盛んに喚いている。所々歯の欠けた汚らしい口元からは涎がだらだらとこぼれて、その様を間近に見て今更ながらに鳥肌が立つ。店長も慌ててやってきた。
「申し訳ありません、桂木様。お怪我はありませんか?」
「驚いたけど大丈夫だよ。店長、この人渡しちゃっていいかな?」
「はい。ボーイを助けていただいてありがとうございます」
「いやあ、受身くらいしかしたことがないから、必死になってしまったよ」
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