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 男性は店長にそう告げて笑った。  店長は男をネクタイで拘束し、警察を呼んだ。男はもともと常連だったが、クスリ常習者で出禁になっていたそうだ。再犯なので、逮捕は間違いないだろうということでほっとする。  助けてくれた男性は五十代半ばくらいだろうか。年の割には精悍な感じでなかなかのいい男だ。背が高く、笑うと若々しい表情になる。 「こいつまた店に来やがって……柊、大丈夫か?」 「…………うん」 「うんじゃねーだろ、はいだろ」 「あ……はい」  そのやり取りをおかしそうに聞いていた男性は桂木天陽(かつらぎ てんよう)と名乗った。なんでも玖前焼の人間国宝である陶芸家の息子で、自身も陶芸家なのだと、天陽が汚れた手を洗いに行った隙に、店長が教えてくれた。 「柊よかったな。お前今日ラッキーだぞ。あの人に気に入ってもらえ」 「なんで?」 「あの人はボーイと寝ないから。ボーイがうまそうに酒飲んでりゃ喜ぶ人だ。金払いがいいから、みんな狙ってるのにあんまり来ないんだぜ」  だから店長は天陽に気に入られれば先ほどの客同様、今日は寝なくて済むぞと言っているのだ。     
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