スティル・ドリーミン

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『結婚しました』  その通告はなんともあっけなく。披露宴の様子を映したインクジェット紙でもなく、子供のアイコンのアカウントからの通知でもなかった。無機質なメールに書かれた数行の黒い文字。結婚報告はそれで終わりだ。  二十五才。  大学を出た人間なら社会人三年目。高卒なら社会に出てもっと経験を積んでいる。職場での人間関係をなんとか構築し、仕事も板につき始め、使える社会人になりつつある年頃。当然、職場や学校で出会いが何かしらあり、共に人生を歩む決断もするだろう。  電話帳に登録して久しく放置していたメールアドレスから、その通知を受けた。一斉送信でもしているのだろうか。そいつとは別に特段仲が良かったわけでもなく、ただクラスメイトだから片っ端から連絡先を交換されていた、その犠牲になっただけ。だというのに、結婚報告だけ律儀に(数行とはいえ)してくるのだから、皮肉なものである。僕は送信主の名前と顔が思い出せずにいるのに。  二十五才。     
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