序章  グランツ帝国史

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 覇王テオドリックが築いたギストリア帝国が建国からわずか30年で崩壊してから、「グランツ地方」と呼ばれていた大陸北部の広大な地域は、7人の諸侯たちがしのぎを削る戦国状態となっていた。  ギストリア暦171年、「神の作りし秘宝」と呼ばれる杖、サークレット、そして指輪の三種のレガリアを手にしたユリウス大帝は、諸侯たちを平定し、最後に残ったヴァルナ藩王国の王女エカテリーナと結婚して「グランツ・ヴァルナ帝国」を樹立する。  およそ20年の治世の後、彼は病死するが、死の床で彼は息子ユリウス2世に「三種のレガリアを絶対に手にしてはならぬ」と言い残した。  父の意向をくんだユリウス2世は、魔道鍛治師たちに命じてレガリアの精巧なレプリカを製作させ、以後の皇帝はそれを身につけるようになる。  3代目のユリウス3世は男子に恵まれないままエールラント王国との紛争で戦死し、4代目には彼の長女クラウディアが即位する。  男尊女卑の気風が強いグランツ帝国にあって、彼女は大変な苦労をして帝国を統治した。 歴代皇帝の中で唯一対外戦争を行わず、軍事予算を縮小して国民経済の発展と文化の振興に尽くした。  しかし治世の晩年「やはり女帝は軟弱でいかん」「これなら私が帝位に就いたほうがよい」と考えたヴィッテルシュタイン公爵と数名の貴族たちが私兵を率いて反乱を起こし、女帝クラウディアはその対応に忙殺される。 およそ2年におよぶ反乱を鎮圧した直後、彼女は倒れた。  
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