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「絶対大丈夫、これから、楽しいことがたくさん待ってるから。だから、今は少しだけ眠ろう?」
『ほんとうに?』
「うん、約束するよ」
『……わかった』
薄らとほほ笑みを浮かべた少年は、次の瞬間、
「っ、……またね」
腕の中から泡が弾けるように、消えていった。
「恭弥」
差し出された手を取って重い腰を持ち上げる。
その手に引かれて大通りまで戻れば、何も変わらない、平和で穏やかな時間が流れている。
だけど、どんなに平和な世界にも、負の感情が渦巻く、闇が存在する。
「……夕飯、肉食いてえ」
「……まーたそれですか。野菜炒めで譲歩です」
例え陽の光が届く世界に生きようとも、この宿命からは逃れられない。
「帰りましょうか」
俺たちは今日も、闇に向かって手を伸ばす。
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