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 A署まで出向くと、自首してきた男と対面した。その男は、日本人ではなかった。  国籍を聞くと、フィリピンだという。金で雇われた事はよく、理解出来た。  この男性曰く、この数日間身の危険にさらされそうで怖かったらしい。だから自首を決した。  交通課の警部補の話によると、彼はやはり雇われたという事だ。雇った人物は、中島仁。 「ほう、君はいくらで雇われた?」  畳みかけるように、馬場警部補が尋ねた。この男は、出稼ぎの為、戸田の倉庫で働いていた。  実際、この戸田の倉庫近くは外国人労働者が多かった。 「百万です……」  身を竦めながら、その男は自供した。聞くところによると彼は、30歳。俺と同じ年らしい。国に奥さんと子供がいるそうだ。  百万という金額は、フィリピンでは大金だ。 「そうか。君は、公務執行妨害でまず逮捕されるわけだが」  俺が切り出すと、覚悟をしたようにその男は、肩を落とした。
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