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見つかった先は羽田空港だった。
あのホテルに宿泊していたが、偽名を使って泊まっていた上に、眼鏡をかけ、帽子をかぶっていたのでホテルマンも気がつかなかった。
「けれど、間抜けな見つかり方ですね」
俺は身を竦めた。あまり賢い人ではなかったという事だ。優佳殺しも認めた。
「あの、薮塚さんはどうなるんですか?」
俺はそれが気がかりだった。あれから何の連絡もない。
「ま、奥さんにはバレたけど、元の鞘におさまるんじゃないかな。戸田のマンションを引き払って、一緒に栃木に行って薮塚さんも、あっちで仕事をするそうだ」
大丈夫だろうか。薮塚警部の事だ。また同じ事を繰り返し、新しい地で女を作りはしないのだろうか。
今は一度、仲直りしたとしても。
また同じように夫婦仲はこじれはしないだろうか。
俺はそれが気がかりだった。
「ま、ひとまず安心だ。今原にとっては災難だったが、まぁこれがきっかけで、あいつの恋も実った。今日、勤務終了後、見舞いに行ってみようじゃないか。彼女も来てるかもしれんが」
馬場警部補は、部下が作った書類に目を通しながら、発した。
確かに……。
今原にとっては、不幸中の幸いになった事件だった。
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