交番ガールの章 夜のレインボウ

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「いや、忙しかったもんで、つい忘れた」と、あっさりと池村君は言う。  まぁ、そんなものか。事件に追われていたし、てんやわんやだったのを、私は知っている。  けれども奈美さんは、それを知らない。池村君の奥さんは一般人だから、詳細を奥さんに話す訳にはいかなかったのだろう。 「でも、よかったね。今原さん」  ニコニコと、奈美さんは笑顔で言う。  本当にその通りだ。普段事件や、ドロドロしたものを見ている私達は、そんな素敵な話を聞くと心が和むものだ。 「そういえばさ、やっと工事終わりましたよね」  奈美さんは、話を変えて私に話題を振った。  工事とは、官舎の前に立った新しいビルの工事の事だ。 「あぁ、本当! そうよね。ずーっと、長い間工事してたものね」  かれこれ一年は建設中だった。長細いビルではあるけれど十二階建てのビルは、高い建物に見えた。 「知ってます? 十二階のフロアだけ、2LDKの賃貸物件らしいですよ」
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