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 私は羨望の眼差しを向けながら、ついついまだ窓辺に入った。後の三世帯の窓には、紙が貼ってあり入居者はいない。  会社の昼休みなのだろう。  他のフロアは食事をしながら、忙しくビジネスマンが仕事をこなしている姿が見えた。  どんな会社が入っているかは知らないけれど、他のフロアはせわしそうなのに対し、一番上の右端の先ほどの奥様はまた表れ、ゆったりと外を眺めていた。  いつも彼女は外を眺めているから、あの階からの景色が気に入ったのだろう。 (いいな……)  私も一度でいいからあの階から、景色を眺めてみたいな。なんて思う。 決してこの官舎での暮らしに、不満がある訳ではないけれど。  
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