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「と、すると、あの女性の旦那さんが殺されたって訳か?」  夫は朝食を摂りながら、発した。 「どうだろうね。私だってあの女性が結婚してたかどうかなんて、知らない訳だし」  そういいながら、私は窓の外に視線を転じる。  まだまだ警察官は、聴取しているようだ。  ここは東西警察署管轄内だ。私達の管轄ではない。地域課なんて、勿論首を突っ込めない。  けれど知りたかった。あの謎めいた女性の事を。  いつもあの上で綺麗な光を見せてくれた、女性の事を。  テレビで告げたあの被害者の男性は、あの女性のご主人だろうか?  ジッと窓辺で外を見ている私を見て、夫は言った。 「そんなに気になるなら、聞いてみればいいじゃん」 「え?」 「だってさ、俺達だって警察だろ」    夫は食べ終わった食器を台所へ持っていき、洗い始めた。  私はどう答えていいか逡巡していた。
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