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「あの人の旦那に、愛人がいたなんて、気の毒な話じゃないか。せっかく良い住いに住んで、人生これからって時に」 「だよねぇ」  夫は、美幸さんに同情していた。  あのフロアに住んで、毎晩窓辺で虹色のライトを照らし、夜景を見ていた彼女は幸せに見えたから。新婚だったとは知らなかったけど。  工藤という男は、IT企業の会社経営らしい。  あの住まいの家賃はやはり新築ともあり、二十万という決して安い金額ではなかった。 「ふん! しょぼい男だな。経営者ならもっといいところ住んでやれよ」  彼は毒を吐いた。  確かに。  経営者なら、もっといいところに住めるかもしれない。  けれどもホトケになってしまった、工藤に色々聞く事は出来なかった。後は刑事課が捜査するだろう。
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