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 それから数日後。  私は官舎の掃除当番に当たっていた。緒方所長の奥さんと一緒に。  官舎に住んでいると、二か月に一度、共有部分の掃除当番に当たる。妻も警察官だろうが、何だろうがこれに参加しなければならない。  仕事を休んででも、絶対参加というよく分からないルールがある。  緒方さんちの坊やは、大分口が達者になってきたようだ。 「ママ、これ終わったら、川口のイオンに連れてって」 「ダメよ。もうおもちゃは買わないからね」  佑里亜さんは、坊やに少しきつい口調で拒んでいた。坊やは軽く、頬を膨らます。普通の親子にありがちな会話と光景。 「ははは。僕、おしゃべり上手になったね」  私は掃除をしながら、坊やに話しかけた。幼い容姿でニコッと笑いかけてくれる所がまた、かわいい。 「もう、いらない事言うようになって、大変なんですよ。おねだりする時は一人前で」  佑里亜さんは、苦笑いしつつ肩をすくめた。
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