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「そっかそっか」
私はついつい、坊やの頭を撫でた。坊やはつまらなそうに、近くの草を抜いて遊び始めた。その姿が可愛らしくて、微笑ましかった。
「ねぇ、悠子さん、そこの例の細長いビルの……」
「あぁ、そこね」
そこのビルの一番上の階のフロアで殺人事件があったのは、もう皆知っている。
「あそこの一番上の階に住む人、綺麗な女性でしたよね」
意外な事を佑里亜さんがおっしゃるので、私は目を丸めた。
「見た事あるの?」
「えぇ、毎晩上から夜景を見ていらして、凄く輝かしかったから、羨ましいな。なんて思って」
彼女も私と同じ事を考えていたようだ。やっぱりそう思うよね……。
「あそこのご主人、一回だけ見た事あります」
また意外な事をおっしゃるので、私はついついその話に飛びついてしまった。
「あの、その辺を詳しく」
小さな情報にも、すがりたい気分だった。
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