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「IT企業の社長なんてそんな羽振りいいのかよ。全く。女を好き放題しやがって。被害者に同情出来ねぇな」と、湯浅課長。  それは私も同感だけど。IT企業といっても、ピンからキリまであるだろうし、実際はどんなものなのかは知らない。  全然触れた事がない世界だから。 「他に女性がいたんですか?」 「それがよ、思いつく女っていえば一人しか見当たらないんだ。他に女がいたのかもしれない。それはこれから探すけどな。 しっかしさ、ショートカットだの、セミロングの女だの、二人はいたって事だろう」  きっと、そうなるのだろう。私も悪いけど、美幸さんのご主人には同情出来なかった。  でも今となっては、お二人とも亡くなってしまった。 「セミロングの女ってのは、太ってたんか?」  せっかちに湯浅課長は尋ねて来た。 「いえ、太ってはいなかったと思います。影だったのでよくわかりませんが。美幸さんが細すぎたんじゃないですかね」  そう今思えばあの、違和感があるシルエットは美幸さんじゃなく他の女性だ。
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