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 住まいの官舎が見えた時だった。官舎の前で、警察官の奥様方三人が何やら井戸端会議をしている。  私はちょっと避けたい三人組だった。何かと人の噂をするのが好きな方だったから。夫の出世。どこどこのご主人は不倫して飛ばされたとか、どこの家の子は、登校拒否になったとか。    私は仕事を持っている為、彼女達に関わらずに済んだ。彼女達も私が警察官だと知っているので距離を取り、あまり、世間話に引っ張ってこようとはしなかった。  その事に安堵を覚えていたのに、だ。 「ちょっと、安西さんの奥さん!」  引き止められてしまった。内心、舌打ちをしてしまう。  そういえばもっともっとお腹が大きくなれば、産休に入るのだから、彼女たちの会話の仲間入りをしなければならないのだろうか。  ちょっと、それだけは勘弁。 「はい」  私は苦笑いをしつつ、彼女らに近づいて行く。
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