8/12
前へ
/693ページ
次へ
「なんだ? さっき下で奥さん方が井戸端会議してたぞ。引き留められたけど、白バイの俺が知るわけないって逃げて来た」  夫は肩をすくめた。どうやら彼女らは、色んな人に聞きまわっているらしい。 「あぁ、そう……」  私は夫に先ほどの経緯を話した。 「会社が潰れそう……か」  夫は眉を潜めた。  そしてもう一度窓辺に立ち、ビルを見上げた。 「うーん。女かなぁ?」  夫は首を傾げる。 「どういう意味?」 「それがだな。今日さっき分駐所で聞いた新しい情報によると、工藤って男は、愛人はいなかったらしいんだ」 「はぁ?」  私はますます、分からなくなってきた。じゃぁあの、シルエットは何? 少しふっくらした、女性のシルエット。  美幸さんに似たシルエット。 「だって佑里亜さんは、ショートカットの女性と食事してたって言ってたけど?」 「多分、それ妹さんじゃないかな」  なんだ、そうなのか……。私はどっと疲れが出た気がした。
/693ページ

最初のコメントを投稿しよう!

902人が本棚に入れています
本棚に追加