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「不倫をしていたのは、もしかしたら、旦那じゃなく美幸さんじゃないかな」  意外なセリフを発した夫に、私は驚いた。 「なるほど……」 「だって、女の影が見えてこないんだ。刑事課は一度は女がいると思ったらしい。けど念入りに調べてみたが、そんな事実は一切なかった。全部空振りだったんだ。あの男の周りにうろついていた女達は秘書だったり、妹だった」  夫は眉を顰める。  私はため息をついた。  今度は美幸さんについて、調べる必要があるようだ。  後日、美幸さんの情報が手に入った。  千葉県市川市出身。やはりお父さんは大企業の頭取。何不自由なく暮らしてきたお嬢さんだった。  T短大卒業後、工藤の経営するIT企業に事務員として就職した。いわゆる、職場結婚。  彼女の情報を知ったのは、ここまでだ。  
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