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 夫が積極的に話しかけると、男性は縮こまる感じで「何か」と怯ええるように尋ねて来る。  小心者なのだろう。 「貴方にお聞きしたい事があるんですよ」  夫が言う。  何だか刑事じゃないのに、刑事面。本当に刑事課に行く事を考えた方がいいかもしれない。きっと合っているだろうから。  その男性は自信がなさげに仕方なく、頷いた。  彼が案内した所は屋上だった。  赤羽の町並みが見下ろせる。こうして見下ろしてみると、赤羽の街も都会なのだと、しみじみ感じた。 「貴方は何か知っていますよね?」  夫が畳みかけると、その男性は少し肩が跳ねた。図星なのだろう。 「なんで……」 「皆が大騒ぎしている時に、貴方は隅で小さくなっている。わかりやすいですよ」  それはそうだ。その事に刑事課の人は何故気がつかなかったか、不思議だ。
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