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「何よ、一体警察が」 「工藤社長殺しの件ですよ」  夫が問うが、杉野さんはふん! と鼻を鳴らし、たばこを一本吸った。どういう心境なのだろう。 「あんなガリガリ女のどこがいいのかしらね」 「貴女が殺したんですか?」  私が問うと、また杉野さんは、ふん! と鼻を鳴らした。 「そういう事にしたかったら、して頂戴よ」  どこか投げやりな言葉だった。たばこの火を、コップに入っていた少しの水につけ、私達二人を睨みつけた。  男を寝取られた悔しさが顔に滲み出ていた。  私も夫を取られると、こんな顔になるのだろうか。  けれど、彼女はそれ以上何も言わなくなってしまった。夫は刑事課に連絡を取っている。  私は、彼女にまだまだ質問を続けた。 「貴女は工藤と付き合っていた。これ事実?」 「そうよ」
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