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「ったく、妊婦の癖によ、あっちこっち回ってないで、休みの日位、家で大人しくしてろっての。お腹の子に触るぞ」  舌打ちしながら、湯浅課長は一気にお茶を飲み、お代わりを促した。 「すぐに、お持ちします」  私はお茶を淹れにまた一度、給湯室へ身をひっこめた。  その口調には優しさが含まれていた。  私は新しいお茶っぱでお茶を淹れ直した。 「なんだ、新しい茶だな。お前なかなか気が利くじゃねぇか」  湯呑を早速すすった湯浅課長は、チラリと私の方を向く。  事件の結果を教えに来てくれたのだろう。 「お前ら夫婦が色々、かき回ってくれたお陰でな。ホシは捕まった」 「誰だったんです?」  途中で刑事課へ引き渡した私達は、その後の事を知らずにいた。 「杉野美保って女の兄貴だよ。杉野美保も共犯だ」  意外な人物だった。    あの時見たシルエット。あのシルエットは杉野さんのお兄さんだったらしい。私が窓辺からあの住まいを見上げていたのを知っていて、かつらをかぶり、美幸さんの代わりに窓辺に立った。
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