白バイ隊員の章 安西隊員の章 終わった筈の片思い

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 この人はもうじき夫になる人だった。  ツインルームの窓からも、夜景が見渡す事が出来る。  彼は私がお風呂から出てくると、軽く私の腕を掴んだ。そのままベッドへ誘導する。  今夜も私はこの人に抱かれる。  十歳年上のこの人は、温厚だった。経済力もある。結婚するには、申し分のない相手だ。  だからこの人を選んだ。  時間をかけて愛された後、彼は私に少し重い話題をふっかけてきた。彼の名は、今井明利。 「君はいつまで、弁当屋のバイトを続けるんだい?」 「いいじゃない。続けさせてよ」  私は背を向けた。 「君は奥様になるのに、何もバイトをする事はないだろう」  この辺の価値観は、少しかみ合わない。けれども、彼は全国に中華レストランを展開し、デパ地下にも店舗を多数持っている食品会社の社長。  私がバイトを続けている事に、違和感を感じるだろう。 「お弁当屋さんだって、貴方の会社じゃないの」 「そうだけどさ」  彼は眉を顰めた。
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