白バイ隊員の章 安西隊員の章 終わった筈の片思い

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 そこには高校時代の同級生の、安西君がいた。  店がオープンしたその日、彼は早速、買いに来てくれたのだ。彼はうちの店に来ると、天津飯の大盛りと唐揚げを必ず購入する。  交通機動隊の分駐所のすぐ隣には、全国チェーン店のお弁当屋さんがある。  安西君はそのお店と、うちをローテンションして、来るようだった。  レジに立った私は目を丸くした。けれども彼はきょとんとしただけ。私は知らないふりをして、レジを打ったっけ。  彼はしかも、住まいがこの近くらしい。よく買いに来るから。 (私を思い出して)  心の中で叫んでみたが、私のその声は届いていないだろう。  安西君はお弁当を注文して、出来るまで椅子に腰かけている際もスマホを見ている。  左手には結婚指輪。彼はいつも結婚指輪を外さない。彼が来る度、私は心の中で、少女の頃の初恋のような複雑なときめきが、沸き起こっていた事を感じていた。
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