白バイ隊員の章 安西隊員の章 終わった筈の片思い

9/13
前へ
/693ページ
次へ
 十二年ぶりの再会。  このまま会わずにいたかった。私の心の片隅に密かに住んで、そのまま、少女時代の思い出として終わってほしかった。  出勤する度、またこの店にお弁当を買いに来るんじゃないかと期待感が最近は高まっていた。  いつも、いつも。  私は何をやっているのだろう。  安西君が来る時間は、12時過ぎが多かった。  おそらく午前中は、バイクで警らしているだろうから。  そんなある日の事。 「21番の方、お待たせいたしました」  私は番号札の番号を呼ぶと、安西君が立ち上がった。 「天津飯、大盛りがお一つと、唐揚げですね」  私がレジを打っている時「君さ、一緒の高校だったよね?」と突然、安西君が発した。  私は思わず目を丸めてしまい「あ、は、はい!」と答えてしまったのだ。 (覚えててくれたんだ)  私は飛び跳ねたい気持ちで、いっぱいだった。 「増原さん?」 「そうです」  私は小声になりながらも、顔が緩む。
/693ページ

最初のコメントを投稿しよう!

902人が本棚に入れています
本棚に追加