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「へぇ。うちにとってはそこの分駐所はお得意さんだよ。日替わりに、お弁当を頼んでくれるからね。お陰で儲けも出て助かってるんだよ。
お得意さんだからさ、昼にこっちからお弁当届けようと思ってね。あんた、届けてくれるかい?」
「えっ」
私は心臓が跳ねた。そんな……。
「ほら、そこの前のチェーン店の弁当屋。あそこはさ、近くの交番とそこの分駐所には従業員が届けてるんだってさ。負けたくないじゃん。だからさ、あの人と顔利きだったらさ、届けてほしいんだけど」
「……。わかりました」
私はしぶしぶ、承諾した。今井さんと私が結婚する事を、店長には言っていない。職場の誰にも実は言っていない。
だから知ったら、驚くんだろうな。この事を今井さんが知ったら、怒るに違いないだろうけど……。
でも、私は届けたかった。安西君を一目見られるだけで、幸せだから。
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