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「私は妻に、仕事を辞めるように促しましたが、楽しいって辞めないって言って困ってたんです」  俺はため息をついた。  この男は何もわかっていない。 「失礼ですが、ちょっと考えが古いんじゃないんですかねぇ?」 「え?」  また恐ろしい目で俺に視線を突き付ける。  おそらく、増原さんはこういう所も嫌になったかもしれないが。 「今は、女性も働く時代です。お金があるからとか、ないからとかそういう事より、やりがいがあったんじゃないですかね? 弁当屋の仕事に。増原さん、イキイキしていましたし。 結婚するんだって嬉しそうに報告してくれましたよ。昨日は私は、妻と一緒に訪れましたが、妻と楽しそうに話していてですね」 「何? そうなのか?」  また目を丸めるこの男。いちいち表情に表れて面白いが。 「えぇ。私の妻も警察官で。今、妊娠していまして。無理しないで仕事をやめていいと言いましたが、警察の仕事はやりがいがあるから続けると言っていました。そういう奥さんの気持ち、大切にされた方がいいですよ」
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