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今井という男の目は少し、しょぼん。と落ち込んでいくのが分かった。目が垂れて行く。
短く嘆息してから、彼は俺を見た。
「申し訳ない。もう一度聞く。君は妻とは……」
まだ関係を疑っているというのか。俺は呆れた。
「何度も言いますが、私は警察官です。不倫一つで警察官を辞めざるを得ない事だってあるんです。だから、それは決してありません。
唯香さんとは、高校の同級生です。特に高校の時、親しくはありませんでしたが、二年続けて同じクラスでしたから。
勉強の面では、私はお世話になりましたが。高校を卒業してからは会っていません」
真実を告げた。全く嘘偽りはない。きっぱりと言い放った俺の言葉に、今井さんは「そうか」と短く頷き「疑って悪かった」と続けた。
何か追い詰めていそうな、顔だった。普通は新妻がいきなり居なくなるなんて、考えられないから。
「あの、妻は本当に嬉しそうでしたか?」
「えぇ、それはもう。私の妻にも、赤ちゃん楽しみですね。なんて笑顔で話してましたし。もうすぐ結婚すると言った時、顔が綻んでましたけど」
「そうか。それなら良かった」
奥さんは逃げた訳ではないと、思っただろう。
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