902人が本棚に入れています
本棚に追加
私は彼の前の奥さんの言葉に視線を落とした。
「まだ、未練がおありなんですか?」
「未練ねぇ」
奥さんは、短く嘆息して魔女のような顔でジッと見る。そういえば私はまだ明利さんから離婚の理由を聞いていなかった。
過去など、どうでもよかったから。
「そういえば、お子さんは?」
「彼から聞いているでしょう。中学生の息子がいるって」
「……。はい」
それは聞いて知っていた。別れる時に奥単位のお金をあげたと。一生暮らしていける筈だと。
奥様の実家もお金持ちだと、聞いていた。だからお金にはそんなに困らないだろうと。
別荘までお持ちなのだから。
「貴女は私に誘拐されたのよ」
「そうですか……」
それについては、驚かなかった。
最初のコメントを投稿しよう!