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 私は彼の前の奥さんの言葉に視線を落とした。 「まだ、未練がおありなんですか?」   「未練ねぇ」  奥さんは、短く嘆息して魔女のような顔でジッと見る。そういえば私はまだ明利さんから離婚の理由を聞いていなかった。  過去など、どうでもよかったから。 「そういえば、お子さんは?」   「彼から聞いているでしょう。中学生の息子がいるって」 「……。はい」  それは聞いて知っていた。別れる時に奥単位のお金をあげたと。一生暮らしていける筈だと。  奥様の実家もお金持ちだと、聞いていた。だからお金にはそんなに困らないだろうと。  別荘までお持ちなのだから。 「貴女は私に誘拐されたのよ」   「そうですか……」  それについては、驚かなかった。
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