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「この前は奥さんの方に世話になりましたが」
「いえ、とんでもないです」
俺は湯浅警部と、隣の巡査部長に椅子を出した。一番下の今原が立ち上がり、お茶の用意を始めた。
お茶を淹れてくれるのなら、ここに婦警でもいればいいのだが、白バイはそうもいかない。
「安西さんは、今井さんの奥さんの唯香さんと同級生だそうですが」
「と、申しますと、誘拐の線が高いと?」
「まぁ、そういう事です」
湯浅警部は淀みなく頷いた。
「誘拐の犯人とか心当たりありませんかねぇ。唯香さんの昔の恋人とか」
「うーん。そこまでは知らないなぁ」
俺は腕を組んだ。第一、彼女と俺はほとんどしゃべった事がなかったのだから、恋愛関係がどんなだったのか知るよしもなかった。
今まで、どんな人生を歩んできたのか、どんな男と付き合ってきたのか、職歴なんて全く知らない。
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