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 まずは受話器を持ち、自分の実家にかけてみる。数回の呼び出し音の後に、母親が出た。 「あ、母さん、俺だけどさ……」  別荘を購入したのは、三年前。覚えているだろうか。そんな事を頭に入れながら、話を進めて行く。 『あれ、弘明、どうした? 悠子さんは元気? 赤ちゃんは順調かい?』  やはり何も知らない母親は、呑気な口調で話をする。 「あぁ、元気元気。性別も男だって分かったから」 『そう? 良かったねぇ。男の子ね』 「あの、それでさ、聞きたい事があるんだけど」  俺はようやく話を切り出した。  別荘の件を聞いてみた。そんな金持ちなら、地元なら話題になっているだろうから。軽井沢みたいな別荘地でもないから、そういう話は、噂になるのは早い。 『山田さんちの事ね』  やはり知っていた。別荘と言っても普通の家なのかもしれない。 「その別荘さ、どこにあるか分かる?」
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