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 午後の警らから帰ってきた時だった。切った切符はたった一枚だけ。まぁそんなものか。  馬場警部補が渋い顔をして、待ち構えていた。 「例の別荘っていうか、家にな、どうもお前の同級生は閉じ込められているらしい。犯人は今井の前の奥さんだ」 「……」  俺は黙り込んだ。 「ったく、何が目的なんですか」  呆れてものが言えない。前の奥さんは今井に未練があったのだろうか。再婚する事に腹を立てたとか。  今井の前妻の名は、山田香奈美39歳。職業は今の所は無職。親はいくつか宝石店を経営していたが、倒産。  財産を失った。前の家は売り払い、仕方なく館山の家に住む事になった。 「身代金は一億円だ」 「はぁ……」 「で、だ。前の奥さんからの要請だ。安西。お前が一億もってその館山の別荘に持ってきてくれとの事だ」
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