3/9
前へ
/693ページ
次へ
 東京と千葉は隣といっても、館山は遠い。車で飛ばして2~3時間はかかる。  あまり俺は故郷に帰った事がない。  パトカーを走らせて二時間半だろうか。  懐かしい港町が見えて来た。太平洋の波は今日も荒々しい。こんな事で故郷に帰る事になるとは、悲しいものだ。  目的の家は海辺の側。  眺めは最高だが、不便だと思う。  茶色いレンガの外壁の建物が、なるほど。五十坪位の敷地内に立っていた。別荘というよりは、一般家屋だ。  その家の周りには紺色の出動服を着た警官らが、囲んでいる。  この中で交通機動隊の制服の俺が一人。というのもなんとも目立つ光景だろう。  俺は白い階段を上がり、玄関をノックする。ドアが開かれた。  出て来たのは、意外だった。少年だ。  あどけない顔をした、学生服をきた少年。きっと今井の息子だろう。 「君は?」 「山田……。蓮斗と言います」  今風の名前だなと、思った。
/693ページ

最初のコメントを投稿しよう!

902人が本棚に入れています
本棚に追加