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 一瞬、山田さんの顔が一変した。息子を思う母親の顔。 「息子さん、あんたがこんな事したらさ、生きていくの辛いだろう。学校で何か言われるかもしれない。これ、全国ニュースになるだろうからさ。そういう事、あんた考えた事あるのかよ」  全く稚拙な誘拐だ。誘拐というともっと凝ったものだろう。こんなガキみたいなやり方で。元夫の再婚相手を人質にとって。  女の考える事なんてこんなものか。 「こんな辺鄙な別荘で、人質とって。あんた捕まるぜ?」  キュッと唇を噛みしめナイフを握る手が緩む。しかし、それも一瞬だけだった。またナイフを握り直す。 「お金。こっちに渡して」 「分かったが、増原さんをよこしてもらってからだ」 「ダメよ」  体中震えながら、ナイフを増原さんに突き付ける。 「仕方ないな」  こんな時にこそ、けん銃だ。俺はけん銃を取り出し山田さんに向けた。
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