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「何? あんたバッカみたい!」  山田さんは、増原さんに言う。増原さんは意味が分からずきょとんとしていた。 「バカですよ。私は。どうぞ、殺したかったら殺して下さいな」  彼女の声はだんだん、弱々しくなっていく。何もかも諦めたような、どうでもいい口調だった。 「あんた、惚れた男でしょう? その男が今こうして目の前に。悔しくないの?」  山田さんの台詞に俺は驚き、拳銃を持っていた手を落としそうになった。どうやら池村が言っていた事は、事実だったようだ。 「関係ないわ!」  増原さんは、沈黙を破るように、山田さんを睨みつける。 「もう終わった事。済んだ事。貴女みたいに過去にばかり、拘ってばかりいられないんです。一体何がしたいんです? 今井さんとやり直したいのであれば、私今すぐにでも、離婚届に判を押します」  流れが違う流れに向いた事に、俺は戸惑いを感じた。蓮人君も何度も目を瞬いてる。 「私は別に前の夫と、やり直したい訳じゃないのよ!」
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