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元夫の再婚相手を、自分の息子まで惚れた事に腹を立てての誘拐。金もなかった山田さんは、金欲しさと復讐のためにこんな事を計画した。
稚拙な理由だ。
「あんた、自分のした事分かってるか? やる事が幼稚だ」
俺が言ったところで、説得できる訳はないのだろうが……。こんな事しないで、もっと他の方法はなかったのか。
「あの、安西君……」
そんな横で増原さんは視線を泳がせながら、恐る恐る俺を見た。困惑の顔をしていた。
「何だ?」
「この人、そんな悪い人じゃないわ」
夫の前妻を彼女は、かばった。傍らで少年の顔と、山田さんの顔がギョッとなる。
「だって……。私においしい料理をご馳走してくれたし、飲み物だって与えてくれてる。お手洗いだって行かせてくれるし、洋服までくれたの」
増原さんは、上等な綿百パーセントの、緑色のチェックのシャツのワンピースを着ていた。高そうに見える。
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