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「そうか……」  それは上等だ。本気で殺すつもりなどないのだろう。 「奥様の作ったビーフシチューやクリームコロッケ、とても美味しかったの。今井さんはこんな美味しいもの食べさせてもらったってわかって羨ましかった。 私はお料理なんて、まだまだだわ。こんな素敵な奥様に比べたら、私なんて全然。彼の奥さんにふさわしくなかったかもね」  短く嘆息した増原さん。そういや彼女は昔から、健気だったな。  傍らで、山田さんの持っていたナイフがポロリと落ちた。  俺はそれをサッと、取る。  山田さんは抜け殻になったように、放心状態になった。  俺はワッパをポケットから取り出し、山田さんの手首にはめた。 「こちら、安西です。ホシを確保しました。全員無事です。けが人はいません」  外にいる警官らに、無線で知らせた。
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