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昼休みの都会のチェーン店カフェは、混雑している。サラリーマンが手早く昼食を済ませた後、手軽に一杯コーヒーを飲んでから職場に戻るのに、ちょうど良いのだろう。
しかし店内からぼちぼちと、背広姿のサラリーマンが急ぎ足で去って行く。そろそろ昼休みが終わる時間だろうか。
俺はまだ少し混雑気味な店内をジッと眺めた。
「あっ」
思わず声が漏れた。奥に増原さんと今井さんが腰かけて、真剣な表情で向き合っている。
悠子はもしかしたら、これを教えたかったのかもしれない。今、手が離せなくて、今日非番だった俺に教えてくれた。あの二人を何とかしてやれって事か。
しかし俺なんかにどうにか、出来るだろうか。逡巡したが、イチかバチか俺は奥の席へ、歩みを進めた。サラリーマンやOLらが急ぎ足で、カウンターに、食器を置き去って行く。
食器洗いに店員は追われていた。
俺の姿を見て「あ」と、今井さんが声を漏らした。
「ども」と俺は短く頭を下げる。
増原さんが「コーヒー買ってくるね」と、レジへ向かうが、奢られるわけにもいかないので、三百円彼女に渡しておいた。
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