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巨大な駅ターミナル。エキナカも充実している、この駅。
駅の改札口で待っていると、背広姿の夫の姿が人混みの中に見えた。何だか痩せ細って見えた。彼は元々痩躯だったけれども。
「パパだ、パパだ」
琴音が頭につけた、さくらんぼのボンボンを揺らしながら飛び跳ねると、傍らで弟の幸太も嬉しそうに飛び跳ねる。
「パパだ、パパだ」
「ごめんごめん。迎えに来てくれたんだな。ちょうど昼時だ。メシでも食べようか」
夫が言う。
琴音はデニーズに行きたいと言い出した。この辺のデニーズと言えば……。
(さいたま新都心……)
夫には申し訳ないと思ったけれど、また一駅だけ引き返す事となった。
「あんた、アイカツ欲しくて、新都心にあるデニーズに行きたいって言ったんじゃないの?」
私は眉を顰めながら、娘を見た。
うっ。と琴音はうなった声を出す。私に嘘をついてもすぐに見抜けられることを知っている娘は、たじろいだのだ。否定してもすぐにバレる。私の予想は的中。
「まぁまぁ、いいじゃないか」
夫の京介は優しくたしなめた。家族でファミレスに行くなんて、いつぶりだろう。
琴音も幸太も迷わずに、お子様ランチだった。
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