4/11

902人が本棚に入れています
本棚に追加
/693ページ
「あの、奥さんが家出ってどういう……」 「実はな……」  林田警部は重いため息の後、語ってくれた。  些細な奥さんとの口論。男にモテたからとか、女性からのメールを男からだと思ったとか、彼女の仕事の事とか。色々だ。  決して人ごとではない。我が家だって俺がうっかりそんな事を言ったら、口論になりかねないだろう。 「あぁ……。麗子が行きそうなところ、どこかなぁ」  林田警部は余裕にない顔で、髪をくしゃくしゃとむしる。こんな心に余裕がない林田警部は初めて見た。  仕事も出来る人だったし、どんな困難にぶち当たった時も何とかやり遂げた人が、麗子さん一人いなくなったらこんな風に、心が乱れるのか。  麗子さんをよほど、愛しているのだろう。  そんな時、悠子がゆっくり体を起こした。目をこすり少し、ボーッとした後、目の前に林田警部がいる事をしり「あぁっ!?」と大きな頓狂な声をあげる。
/693ページ

最初のコメントを投稿しよう!

902人が本棚に入れています
本棚に追加