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 急に来たから、何かあったのは察知している筈である。 「実はな、麗子が家出してしもうた」  何故か警部は、関西弁で発した。 「えっ」  悠子は目を丸くし、俺の顔を見る。意気消沈し説明する元気がない警部の代わりに、俺が悠子に説明した。 「あぁ、なるほど……」 「このまま、帰ろうと思ったんだが、真っ先に何故かお前ら二人の顔が見たくなってなぁ。何でだろうなぁ」  放心した表情で林田警部は発する。  ここまで落ち込んだ林田警部を見るのは、悠子も初めてである。 「うん。あの、奥さん、お友達が仲居してるって言ってたんですよね? じゃぁ、温泉に行ったと思いますよ」 「えっ」  俺と林田警部は意表を突き、悠子に視線を遣る。流石は女だ。女心はやはり女が一番わかっている。
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