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「ここから一番近い温泉ってどこかしら……」  悠子が言う。 「うーん」  俺は林田警部と顔を見合わせながら、お互い交互に発した。 「伊香保」 「草津」 「鬼怒川」 「湯河原」   「湯河原が一番近いかなぁ……」  林田警部が、頭を上にあげる。 「湯河原なら、ここから新幹線でこだまに乗って、品川の次の駅でしたっけ。そこから在来線に乗るんですよね」  悠子は指を顎に当て、また上を向いた。 「あ、でも伊香保の方が近くないかなぁ」  俺はふと、思い出した。  赤羽から大宮は近い。大宮から新幹線に乗り、高崎まで一駅。高崎から在来線に乗り渋川で降り、そこからバスが出ている。 「確かに、群馬の方が湯河原へ行くよりは、アクセスはいい。その女性がどこの旅館に勤めているか、ちょっと俺、刑事課に聞いてみます」  俺は立ち上がり、電話をかけた。むろん電話をかけた先は、東西署の刑事課だ。
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