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 琴音も幸太も温泉に来るのは初めてだった。 「ここは、伊香保温泉よ」 「ふーん?」  琴音はきょとんと、小首を傾げながらぐるりと見まわした。周囲を見回すと、山々に囲まれた中、沢山の年季が入った旅館が点在している。  歴史ある温泉地だ。  その中の一つ。旅館というよりはホテルに近い目的の宿を発見した。 『旅館ニューしぶき』  割と立派な外観のホテル。階段を上り、自動ドアをくぐる。綺麗な絨毯が敷かれたロビーが目の前にあった。 「いらっしゃいませ」  フロントには、制服を着た清潔感のある女性従業員の声。  仲居さんの村井優真さんの紹介できました。と告げると「お待ちしておりました」と応答された。  その仲居さんである、村井さんが出て来た。綺麗な薄いパープル色の着物が制服。すっかり板についた姿だった。
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