4/17

902人が本棚に入れています
本棚に追加
/693ページ
 そんなお部屋、仕事でしか泊まった事がなかった。 「はい。麗子さんにはお世話になりましたから」  ペコリと彼女は頭を下げた。無事で暮らしている事に私は安堵を覚えた。 「あの、ご主人と喧嘩なさったって、大丈夫ですか?」  彼女は心配そうに、眉を八の字にさせる。今度はパターンが逆になってしまった。私が心配される立場になってしまった。 「大丈夫よ、うん」  と言いつつ、少し大胆な事をしてしまった事に後悔はしている。けれども、こんな行動を起こしてしまうのも、私。  堪忍袋の緒が切れてしまっての行動だった。 「そうでしたか……。また御用がありましたら、何なりとお申し付けくださいませ」  彼女は丁寧に仲居らしさが身についたまま、頭を下げた。 「琴音、幸ちゃん、お風呂入ろうか」
/693ページ

最初のコメントを投稿しよう!

902人が本棚に入れています
本棚に追加