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琴音が鼻歌を歌うと弟もつられて、鼻歌が出た。
私は折角、気晴らしに来たのに何をやっているのだろう。
お風呂から上がり、着替えて手持ちの温泉まんじゅうを口にした。琴音は、パパから買ってもらったアイカツのシールセットを眺め、幸太はトミカで勝手に遊んでいた。
いつもの我が家の日常だ。
パパがいつもほとんどいない、日常。
子供達も慣れっ子だ。
そんな時、着信音が鳴った。表示を見ると社長からだった。
「はい」
『林田さん?』
社長はいつも優しい女らしい声だった。辞表を伝えたばかり。色々後で手続きはあるだろうが、一応伝達だけしておいた。
「はい」
さっきとは違う、緊張が伴った声が出る。
『私もさ、伊香保温泉に行こうと思うんだけど』
「はい?」
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