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それはまた、驚いた発言だった。心配してくれているのだろうか。
「でも、遠いですよ?」
『いいからいいから。林田さん、社員旅行もお子さんが小さいからいけなかったでしょう? 私がプレゼントしてあげる。明日、伊香保に行くわ』
語尾にハートマークやト音記号マークがつきそうな程、はしゃいだ声だった。
「え? いいんです?」
兵庫から群馬はかなり遠い。
新幹線で東京駅で乗り換えし、東京から上越新幹線にまた乗り換えだ。そこでまた在来線に乗るという、ハードコース。
『いいから、いいから。大丈夫よ。だって私、まだ行った事ないんだもの』
確かに関西の人は、東京から上の地方って足を向ける事はないかもなぁと、思考が過る。
関東は日本の中心にあるから、西へも東北へも行ったりはするが。
「あの、分かりました。明日、高崎駅までお迎えにいきます」
『本当? ありがとう』
社長は最後まで、弾んだ声だった。
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