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「この太いおうどん、おいしいよ」
琴音は、初めて食べるおっきりこみ鍋を食べて感動した。
「そうね、おいしいね」
しょうゆベースのだし汁に、キノコやネギ、鶏肉、太いうどんが入っている鍋だ。
「こういうの、パパ好きそう」
琴音は言う。
私は思わずピタリと、箸が止まってしまった。じわりと胸の中に広がる罪悪感を再び感じた。
(京ちゃんも一緒にくればよかった……)
私は、何をやっているのだろう。悲しくなった。
「ママー! 幸ちゃんが」
ぼんやりしてると、琴音が少し大きめの声を出した。上の子が弟や妹が何をしたか、教えてくれる時は、大体ろくなことがないものだ。
「わっ、幸ちゃん!」
我が息子は、おっきりこみ鍋の汁と、刻まれたうどんが入った椀をひっくり返した。
勿論、息子は泣く。これも日常だった。
「あぁ、ちょっと待ってて、タオル持って来るから」
私は立ち上がり、慌てながら、お風呂場へ行ってタオルを探して持ってきた。
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